本稿は、技術評論社刊『モバイルプレス』99年秋号に掲載されたものです

HP200LXで「ポケットにハングルを！」

　ここにご紹介するのは、「SAN」というハングルエディタです。すでに韓国語/朝鮮語を使える方や、HP200LXで使えるハングル・エディタを探していた方はもちろんのこと、韓国語/朝鮮語の学習を始めるきっかけを探していた人にも読んでいただきたいと思っています。韓国語/朝鮮語は、まったく知らないという方向けに、ハングルの仕組みを説明したコラムなども用意してみました。なおこのエディタはHP200LX専用ではありません。Windows95のDOS窓で使うこともできます。キーボードを叩きながら隣国の言葉と文字をお楽しみください。

■はじめに

　インターネットの普及は、日本語や英語以外の文字をコンピュターで扱うことを身近なものにしてくれました。マイクロソフトが無料で配布しているフォントを使えば、Internet Exploreだけでなく、Netscape Navigator 、Netscape Communicatorでも韓国語や中国語のWebページを表示させることができるようになります（注）。また、Windowsアプリケーションは、フォントを自由に選択することが可能ですから、ブラウザと同じように表示用のフォントを用意し、入力方式（IME）を用意すれば文書の編集も簡単にできるようになります（文字コード体系上の問題で多少の不具合はあるものですが）。例えば、先のハングルのフォントを用意し、秀丸でそのフォント(Gulimche)を選択することで、韓国語の文字コードで表現されたファイルを読むことが出来るようになります。入力するためには、kWnn95のような市販のものや、yonpilというフリーウェアを利用しても可能になります。
　インターネット、Windowsでこのように韓国語や中国語を扱う敷居が低くなっているのですから、いつも持ち歩いている、HP200LXでもこれらの言葉を扱ってみたくなるってものではないですか。
　そこで、今回は、HP200LXでハングル・エディタを動かします。次回は、内田慶市さんにバトンタッチして中国語エディタのことを書いていただく予定です。では「東アジア語でインターネット（その１）ポケットにハングルを！」。

注：IE3、4あたりまでは、フォントだけ独立してダウンロードできたのですが、IE5になってから、このGlobal IMEと一緒にしかもってこれないようです。
　マイクロソフト以外にも使えるフォントはあります。URLの欄を参照してください。

■SANとはなにものか

　さて、今回ご紹介するSANは、AT互換機で動くように開発されたハングル・エディタです。まずは、SANとの出会いを書いておきたいと思います。
　先に述べましたように、インターネットでの英語以外の外国語もずいぶんと身近なものになりました。ある方から、マイクロソフトのサイトからハングルや中国語フォントをダウンロードしてインストールすれば、向こうのサイトを読めるようになりますよ、と教えていただいたのは、1996年の12月の末で、その正月休みは、中国語や韓国語のサイトを楽しむことができました。
　続いて、Windows3.1時代から使っていたハングルエディタModngulで拙い韓国語Webページを作ってみたのですが、この誤字脱字だらけのページに韓国からアクセスが始まります。こういう「よちよち歩きの韓国語」を見ると、きっとアドバイスをしたくなるのでしょう。何通もの添削メールをいただきました。中には、日本で出版されているテキストの文をそのまま使っていたところに「いいたい事はわかるが、韓国ではこうは言わないよ」とインターネットならではの訂正をいただいたこともあります。まさに、インターネットを使った「現場の」語学学習です。
　あるとき韓国の新聞記者の方に、ハングル・エディタのいいものがあったら紹介してくれませんかと書いて、送っていただいたのがSANだったのです。しかし、これは初めて聞く名前でした。
　ご存知の方もいらっしゃると思いますが、PC上でハングルを扱う試みは、80年代の後半にも、PC-VAN上などでさなされいて、山口真也（きょん☆あさん。末尾URL参照）さんが、VADA（海）というエディタをPC9801に移植し公開されていました。当時、PC9801でハングルが表示された時には、すごく感激した記憶があります。ですから、このVADAのWindows版だとか、Modngul（Windows3.1版）のWindows95版などがどこかにないかな、と期待して先の問いあわせをしたのですが、送られてきたのは、なんとDOS用のエディタだったというわけです。最初はちょっとがっかりです。DOS用ならば、VADAが英語モードで動いていました。もっとも、VGAしかサポートしていなかったので、HP200LXでは使えなかったのですが。
　しかし、SANのファイル構成を見ていたら、対応する画面をディスプレイドライバで切替えるようにしてあって、なんとCGAにも対応しているではないですか。CGAモードでインストールすれば、HP200LXでも動きそうです。そして、実際に、この小さな画面に、25行モードでハングルが表示されたのです。

■HP200LX用ディスプレイ・ドライバ開発へ

　こうして表示はされたのですが、やはり25行モードでは字が小さすぎます。ならば、HP200LXの画面に10行程度で表示するディスプレイ・ドライバを作ればいいわけです。必要なものは、なんといってもソースファイル。SANに添付されていたドキュメント・ファイルに作者の名前とメールアドレスがのっていましたが、韓国のパソコン通信のものだけです。そこで、韓国のHP200LXユーザ会の代表の、ソン・テジョン氏にメールでお助け依頼をしました。当時、氏は、200LXを落としてしまって途方にくれていて、「会の代表とかになってるけど、今、マシンないよ」なんて言ってましたが、彼に「人探し」をお願いして、無事、作者と連絡をとることが出来ました。97年夏にソウルでお会いした時には、CEやザウルス、など他のパームトップも検討してましたが、結局、HP200LXを買い直されたようです。ま、「代表」なんですからね、そうでなくっちゃ。
　作者の、パク・クヒョン氏は、SANを作った当時は、建国大学の電子工学専攻の学生さんだったようです。連絡をとった時は、すでに就職されていていました。SANのことをお聞きしたら、作ったのはずっと昔のことなんで、質問されても答えられないよ、という断りのあと、こころよくソースの提供と、日本での公開を承諾してくれました。こうして手に入ったソースをながめて、ドライバ作りに入ります。
　本体はBorandC、ドライバはTASMでコンパイルされていました。しかし、時は1997年。職場の同僚に聞いてもTASMなんてだれも持ってません。私も引出しの中のＦＤから見つけたのは、MASM。まったくタイムカプセルを開いてしまったような気分です。私が、コンパイル環境作りでモタモタしている間に、HP200LXでハングルを使うことに関しては先輩のＭＵＫＡさんこと向井田さんが、彼の同僚とともに、ドライバを完成させてしまいました。先を超されてちょっとは悔しかったですが、きっと、私がやるよりよかったのでしょう。あっと言う間に出来上がってきました。
　この段階で、ＭＵＫＡさんと共同でFHPPCに登録したものが、今も最終版です。その直後に、OGASAさんが、ディスプレイ・ドライバの別バージョンを作ってくれています。実は、HP200LXのCGA画面をVGAの縦半分にみたてて、展開する文字はVGA用にするというのが、ディスプレイ・ドライバの考え方なのですが、これだと、SANのロゴ表示でハングする問題がありました。また、プルダウン・メニューの幾つかは、下の方の項目が隠れて見えないという問題も抱えていたのです。
　ロゴは表示しなければいいし、項目が見えないメニューもコメントが最下行に表示されますから、なんとか使う事はできました。そのあたりは、フォントの縦方向を間引く事で実質表示行数を増やしたのがOGASA版ドライバで多少改善されます。
　こうして、FHPPCのメンバーにサポートされて、HP200LX用のハングルエディタSANは登場したのです。

必要なファイルの所在

FHPPC LIB 7
662 PBC00321 97/04/19 508914 224 B SAN12H20.LZH SAN LX対応ハングルEditor
711 PFB02312 97/07/21 4006 164 B SANDRV16.LZH ﾊﾝｸﾞﾙｴﾃﾞｨﾀ SANで16行表示

MUKAさんのサイトのURL
http://hp.vector.co.jp/authors/VA008289/
　このサイトでＭＵＫＡさんは、SANのドキュメントをHTML化して公開されています。マニュアルなどもオンラインで読めます。目次は日本語訳もあります。一部、日本語になっている部分もあります。全訳もあると嬉しいのですが（誌面を借りての要望）。

■SANのインストール概要

　以上がHP200LX版SANの登場までの経過です。それでは、実際に使う方法の説明に入ります。
　必要なものは、SANの関連ファイルがパックされている、SAN12H20.LZH。
　HP200LXが必要なのはいうまでもないですが、デスクトップやノートPC上で設定の後、ファイルをまるごとHP200LXに転送する、ということも可能です。

圧縮を解凍

　適当なディレクトリ（例えば、\SAN）を作ってそこに展開します。

A:\SAN>lha x SAN12H20.LZH

　フォント類（かわいい手書きフォントまで入ってます）を含めて展開しても、1.5M位です。スペースに余裕のない方は、必要なフォントを一種類にして約700Kを用意すればOKです。デフォルトのフォント設定は、SAN.KOR(ハングル) SAN.ENG(英字)になっています。

SANSETUP.EXEで基本設定をおこなう

　ファイルの展開が終わったら、次にディスプレイモードを設定します。
　このSANSETUPというコマンドは、DOSの英語モードで使わないと、カーソルの反転が見えません。そこは注意してください。

（画面　SANSETUPの起動したところ）

　ここの「User Driver」を選択して、CGA640-3.DRVを指定してやります。OGASAさんのドライバ（CGA640-4.DRV、-5.DRV）を使う場合も、ここで指定することになります。
　以上です。これで基本的な設定は終了しました。

■基本的な使い方

　カーソルの移動などは、普通のエディタと同じですから省くとして、必要な点だけ解説します。

起動-終了

　起動は、DOSのプロンプトで、SANとたたくだけです。すると、なにも文字のない画面とメニューバー、info領域にハングルがならんだ状態が現れます。
　終了は、ALT-Xです。プルダウン・メユーからも選べますが（ALT-F ファイルメニュー）、まずは、これだけ覚えておいてください。編集用のバッファに変更があると、保存するかと聞かれますので、ハイ（ィエー）、いいえ（アーニョ）を選んでください。

（画面　終了のところで、保存するかどうかを聞かれるところ）

ファイルの保存、読み込み

　次は、ファイルを読み込んでみます。このパッケージには、作者、パク・クヒョン節あふれるドキュメントがついています。添付されているドキュメントは、以下の３本です。

　USING.DOC　　　ver1.041のものだが全体的なマニュアル
　APPEND.DOC　　変更履歴
　README.DOC　　セットアップの仕方などが記載されている。

　ここで注意していただきたいのは、これらのファイルは「組合形」コードで書かれているということです。
　ハングルの文字コードには「組合形」と「完成形」の二つ方式があって、ファイルのコードとエディタの設定が合っていないと読めません。
　ハングルの文字の成り立ち（コラム参照）にも関係してますが、ハングルの字母（母音、子音）に対応する要素を組み合わせて、書くように文字を構成するのが「組合形」です。80年代には、AT互換機上で動くエディタやワープロが沢山世に出たようですが、各社さまざまな文字コードを作り出したようです（私の手元には、これらの文字コード群の相互変換ツールの解説本があります。まさに各社各様）。インターネットの普及にともなって、今ではこの方式はすたれてしまっているようですが、このSANのように90年代の初めのインターネット前夜に開発されたものでは、こうした文字コードのサポートも必要なのでしょうか。他方、今日、インターネットを飛び交っているのは、韓国の国家規格であるKSC5601で使われている「完成形」です。ハングルは要素字母に分解できるとはいえ、一つ一つは独立した文字です。ですから、存在する組み合わせ文字ごとに文字として「完成」させたものに順番に文字コードをふったものが、「完成形」と呼ばれるものです。
　これから使われる方は、この完成形に統一されたほうがいいです。拡張子は、.ksにしましょう。

　どちらの文字コード体系を使用するかは、メニューのO)選択のCハングルコードで設定できます。

（図　「O)設定」の「ハングルコード」）

（コラム　発音の表記は、発音記号がうまくだせないので、イイカゲンです。ちゃんとしたテキストをみてください。）

入力方式

　さて、いよいよハングルを入力します。ハングルの仕組みは「コラム」でおおよその雰囲気をつかんでおいてください。最も基本的な構成は、ローマ字と同じ「子音」「母音」の組み合わせです。ローマ字と違うのは、「子音」「母音」「子音」もあることです。
　入力方式には２ボル式と３ボル式が選択できます。このボル式とは、タイプライターの入力の方式のことのようですが、詳しくは知りません。２ボル式を選んでください。

（図　２ボル式の選択）

　起動時は、英字入力モードです。ここで
、shift＋spaceで、ハングル入力モードになります。また同じ操作で英字に戻ります。

（図　英語モードから、ハングルモードへ）

　ところで、どのキーがどの字母に対応しているのかがわからなければ、立ち往生です。まずは、キーボード・マップをつくりましょう。途中でスペースバーを押しながら、文字キーを順番に押していきます。こんな風にしてつくったのが、以下の表です。

（図　キーマップ）

　上段（ＱＷＥＲの列）には、Shiftで表示させる字母があります。
　これは、左側に子音、右側に母音、という合理的な配列になっています。おかげで日本語のローマ字入力よりも数段短期間でタッチタイピングができるようになります。
　以上でハングルエディタで文字を書く基本は終わりです。ファイル操作メニューを使いこなしてください。
　なお、ファイルメニューにある「DOS」は使わないでください。ハングします。その後、ハードリセットをするはめになり、誤操作すると最悪、RAMディスクを初期化することになります。

■漢字、フォント、日本語ハングル交じり文

ハンチャ（漢字）変換

　韓国と北朝鮮では漢字の使用について政策的な違いがあるようですが、漢字が使われないわけではありません。漢字ハングル交じり文は、韓国の新聞などではあたりまえの表記です。日本語と文法構造が非常に似ているので、初学者でも「てにをは」を学ぶと、この漢字ハングル交じり文が随分とわかるようになってきます。
　で、この漢字（ハンチャ）の出し方です。
　変換したハングルにカーソルを合わせてＦ９を押します。すると候補一覧がポップアップされますから、そこから選びます。単漢字変換です。逆もできます。

　アンヨンハシムニカ、が「安寧ハシムニカ」、というわけです。

文字フォントの選択

　さて、今度は、SANに用意されている多彩なフォントを楽しんでみましょう。フォントは、英文用とハングル用の二種類が用意されています。選択は、以下の図のようにおこないます。フォント名と字形がメニューにしめされますので、そこで選ぶだけです。この選択にあたっては、SANのディレトリにフォントファイルを展開しておかないとできません。

（図　フォントリストを出しているところSANFONT.EXE）

　パッケージの中にSANFONT.EXEというものがあります。これは、フォントマネジャーで、これで使用可能なフォントを整備することができます。
　200LX用ドライバでも見ることも出来ますが、CGA640-3.DRVでは、フォントファイル名が表示される下半分が見えません。VGAモードのPC上で確認するのがいいでしょう。
　このソフトでメンテナンスされたフォント・リストは、SANFONT.LIB の名前で保存されます。SANの本体は、このSANFONT.LIBを参照して、「O)選択」でのハングル/英語フォントのリストを出力しています。

日本語ハングル交じり文の作成

　以上で基本的なハングルの入力は可能になったと思います。次は、日本語とハングル交じり文を作成してみます。
　実は、ハングルの文字コードテーブルの記号の部分には、平仮名、片仮名も用意されています。JISの記号の部分と似ています。漢字は、JISの漢字すべてではないにしても、ハンチャで多くの文字が対応しています。F4で絵文字/記号のポップアップがあらわれますが、やはり下の方が隠れて見えません。見えたとしても平仮名などを一文字づつ入力うするとになるので、やはり使い慣れた日本語入力環境で書きたいものです。
　それでまず、通常の日本語エディタで日本語文書を書いて、SAVEし（文字コードはS-JIS）、これをKSC5601の韓国語の文字コードに変換できれば、その文書は、ハングルエディタで表示することが出来るわけです。このようなことを可能にするフィルタを含めてハングル・ツール群を、平野さんが作成、公開されています。FHPPCにも登録されていまし、また、平野さんのWebサイトを参照してください。
　S-JISをKSに変換するには、

　hrks < infile.txt > outfile.ks

　としてやればOKです。漢字の字体はいわゆる旧字体ですね。

（図　ハングル日本語交じり文）

　韓国語を実現するのに、KSコード（KSC5601）だけを前提に話をすすめてきましたが、もう一つ大切なコード形に、KWというものがあります。これは、KSをS-JISの空間に展開したものです。KWというのは、KoreanWriterというハングルワープロの文字コード体系です。S-JISの記号、第一水準、第二水準、という構成が、韓国語の記号、ハングル、ハンチャにおきかわったものです（境界は一致してませんが）。KWは、高電社のKoreanWriter以外にも、オムロン・ソフトウェアのKWnn95などでも使われている体系です。
（KS、KWの他に、インターネット・メールについては、iso-2022-kr、また最近の動きとしてUNICODE、と説明したい領域はたくさんありますが、詳しくは、末尾に紹介してあるきょん☆あさんのWebや、よしだともこさんのWebを参照してください。）

■印刷、Windows95でのハングル環境

　HP200LXでハングルを印刷する方法となると、HP200LXでは日本語の印刷もしていない私には説明のしようがありません。日本語同様、印刷は、win95のＰＣ環境で行うことにします。三通りほどご紹介しましょう。
　まず、最初は、SANをDOSで動かして、そこから印刷。できるかも知れないですが、やってません。
　次は、Modngulのように特別なフォントを必要としないWindows用エディタで印刷。この方法は、文字の大きさなどにこだわらないのならば、一番お手軽だと思います。
　三つ目は、フォントを用意して、Windowsのエディタやワープロから印刷する方法です。
　必要なものは、フォントの選択ができるワープロやエディタ（WORDでも可能です）と、冒頭にふれたハングル・フォントです。フォントはマイクロソフトのGulimcheが一番手軽ですが、印刷となるとこの字体は不満だ、という方も多いようです。そういう場合は、好みのフォントを探してきましょう。韓国では、フリーのフォント集がCD-ROMで販売されていますし、ネット上にもいろいろあるようです。一例を末尾のURLに載せておきました。
　例えば、秀丸のメニューの「その他(O)」で設定を選び、フォントにGulimcheを選んでやります。

　これで、PCの印刷環境でハングル・テキストを印刷することが可能になります。KSコードのデータをPCにデータを転送して印刷してください。先の方法で作成されたハングル日本語交じり文も印刷されます。

■おわりに　東アジア語でインターネット（その１）

　最後になって言い出すのもなんですが「ハングル語」という言い方は変です。ハングルは、「偉大な（ハン）文字（グル）」という意味であって、あくまで文字なのです。ハングル語という言い方のおかしさは、平仮名語とか、アルファベット語、と言うかどうか考えてもらえばすぐにわかると思います。ただ、ハングルで表記される言語を「韓国語と呼ぶべきだ」「いや朝鮮語と呼ぶべきだ」という議論が存在するために、そのややこしさを回避するために「ハングル語」なる言い方ができてしてしまったのかもしれません。NHKの「ハングル講座」という呼び方の影響も大きいと思います。
　本稿では、韓国語という呼び方を使っています。これは、私の「ハングル」コミュニケーションの対象が、韓国の友人たちが中心であり、彼や彼女たちが、自分の使っている言葉を韓国語と呼んでいるからにほかなりません。北朝鮮の人と話すときには、彼や彼女が自国語を朝鮮語と呼ぶでしょうから、私の「ハングル」は朝鮮語を表記することになるのです。では、韓国の友人と北朝鮮の友人と三人で話す状況になったら、どうなるのでしょうか。
　私が想像するのは、韓国語、朝鮮語、日本語、英語、そして、中国語やロシア語が入り交じった会話の場面です。韓国の友人と話す時は、すでに、韓国語、日本語、そして共通語の英語が入り交じります。完全なるバイリンガル人間にはなれそうもないので、私は、このような言語混在状況で意思疎通をはかっていこうと思います。
　実は、「東アジア語でインターネット」というところには、そんな思いを込めています。先に「ハングル語」という言い方にかみついていますから、「東アジア語」なんて言語はないぞ、とお叱りをうけるかもしれません。実は、これは英語でいうと、East Asian Languages と複数形なんです。だから、「いろいろな東アジア語が渦巻く状況をインターネットで作り出そう」と読み替えてください。
　2002年には、ワールドカップが日韓で共催されます。巨大なスポーツ・イベントの是非の問題もありますし、様々なところで、民族的なしこりやらわだかまりやらも吹き出すかもしれません。その時に、直接的なコミュニケーションを成立させることが、問題解決の条件になると思うのです。
　まずは「あいさつ」と「お礼」から始めて、物財の交換や一緒に食事をできるようになるまで。あなたのキーボードが、そんなコミュニケーションの入り口になればいいな、と思っております。

■筆者プロフィール

藤本一男
kazuo.fujimoto@nifty.ne.jp
http://world.std.com/~fujimoto
メモレックス・テレックス株式会社　勤務
津田塾大学非常勤講師「情報と社会」担当。秋の講義で「マルチリンガル・インターネット」を扱う予定。講義資料Webを参照してください。 http://edu.tsuda.ac.jp/~fujimoto

■関連URL

ハングルフォント
　マイクロソフトのIE用オプション。GlobalIMEのKoreanKitと一緒にパックされています。

http://www.microsoft.com/msdownload/iebuild/ime5_win32/ja/ime5_win32.htm

　IE5がインストールされていないと、これはインストールできないようです。

　次のところからは、Unionwayのフリーのフォントを手に入れられます。IEとは独立に扱えるという意味では、こちらのほうが便利かもしれません。

http://www.gy.com/www/ww1/ww2/unionkor.htm

　ダウンロードして展開したフォントをwindows\fonts に放りこんでやります。

ハングルエディタ Modngul
　作者：winbird氏
　もともとWindows3.1 用のエディタ。KSコードでの読み書きもできます。フォント内蔵方式なので、Windows環境で手軽に使えるエディタです。日本語のWindowsプリンタに印刷もできます。
　現在version2.5。私のWebページでシェアウエアとして公開配布しています。
平野さんのハングル・ツール集
・Webで学ぶ韓国語
　KOREA NET http://www.korea.co.jp
　韓国語入門があります。
・山口真也（きょん☆あ）さんのサイト　ＰＣとハングルといえば、この方を抜きには語れません。氏主宰の「韓国・朝鮮ＭＬ」で大抵の悩みは解決します。
　http://www2d.biglobe.ne.jp/~kmlabs
もっと、マルチリンガルを
　吉田智子さんのWeb
　 htttp://www.biwa.or.jp/~tomoko

1999/08/06入稿

HP200LXで「ポケットにハングルを！」

■はじめに

■SANとはなにものか

■HP200LX用ディスプレイ・ドライバ開発へ

■SANのインストール概要

■基本的な使い方

■漢字、フォント、日本語ハングル交じり文

■印刷、Windows95でのハングル環境

■おわりに 東アジア語でインターネット（その１）

■筆者プロフィール

■関連URL

■おわりに　東アジア語でインターネット（その１）