『グース』社内報Dash原稿 1996/12/11

 空を飛ぶ話は、いろいろとあると思うが、これは、初めて南下する渡り鳥(グース)に、父娘が軽量飛行機で道案内をすることになるお話。鳥には「刷り込み」という、生まれてすぐに見たものを母親だと思い込む性質があるらしくて、この映画は、実際にそれを使って撮られているらしい。鳥が、よくあそこまで「演技」をするものだ。
ただでさえ難しい14歳の娘が、母親の事故死によって、十年来会っていなかった父親と暮らすことになる。娘は、父親に対してなかなか心を開かないが、グースを媒介に、心を通わせていくあたりは、ありそうな話ではある。しかし、実際のグース達との飛行訓練など、出てくる場面は、全然ありそうではない。軽量飛行機など、驚きだ。
小学生の娘をもつ私は、「父娘物語」として感情移入しながら楽しんでしまったが、他にも気になるところがあった。それは、この父親の友人たち。おそらく60年代のフラワージェネレーションに属するであろう彼らは、子供のままの感受性を残したままの大人でもある。この世代には、一方では、成功し名声を博している人達もいるが、この映画にでてくるのは、その反対の世渡りは不器用な人達。そこには、地位も名声もない。しかし、この「父娘物語」の大事な背景として、彼らのこだわりとスペシャリティと友情があった。あんな感じの先輩がいるなぁ、と思わず、ニヤっとさせられてしまった映画でもあった。

1996/12/11 (Wed) 22:38:04 <ふ>

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